年の暮れお寺カフェ2017 文字起こし1 の続き(だいぶ加筆あり)
・瞑想をはじめる前に。
このマインドフルネス瞑想を始める前に、皆さんの瞑想のイメージはどんなものでしょうか。
「無」になったり、神秘体験が起きたり、足が痛いのをひたすら我慢したり、まっすぐに座ることでしょうか。
これから行う瞑想は、時にはイスに座って、時には歩きながら、場合によっては寝ながらでもできます。
無になる必要はありません。足が痛いのを無理に我慢することも必要ありません。
あぐらを組んだ時に膝が高く浮いている人はすぐに足が痛くなるでしょうから無理せずイスに座ってください。
・手動瞑想をやってみよう
これから手を使ったマインドフルネス瞑想をみなさんでやってみましょう。
この手動瞑想はタイ東北部のお寺で行われています。
まずは私がやってみます。最初は目を閉じて行ってみましょう。
皆さんで一緒にやってみましょう。(全員で。)
それぞれの動作で手の動きが止まったときに「手がここにある」感覚を意識してみましょう。
例えば車を運転している時に、わざわざ足元を見なくても右足でアクセルやブレーキを踏めるのは「右足がここにあるな」とわかっているからです。
「手がここにある」「足がここにある」「頭がここにある」といった感覚は日常のなかで当たり前に感じていることです。
この感覚を使って「手がここにある」感覚をひとつひとつの動作で意識してみましょう。
(しばらく14の動作を続ける)
しばらくするといつの間にか考え事をしたり、何かを思い出したり、周りの音が気になったりします。
そうしたらまた再び、手の動きが止まるたびに「手がここにある」感覚に戻ってきます。
やがてまたイメージが沸いてきたり、体のどこかが痛かったり痒かったりすることが気になったりします。
そうしたらまた再び、手の動きが止まるたびに「手がここにある」感覚に戻ってきます。
・心は勝手に動き始める
ここで皆さんは考え事をしようとしなくても、心が勝手に考え事をしてしまうことがあるでしょう。
ここで大事なことは「あなたが考えてしまう」のではなく「心が勝手に考え始めてしまう」ことです。
(参加者が連れてきた子供の話し声が聞こえてくる)
例えば今、子供の話し声が聞こえてきました。
それは本当はただの音のつながりですが、一瞬のうちに心がつかまえてきて「子供の声」であること、話している意味内容を解析してしまいます。
心は反射的にこれほどのことを一瞬でしてしまいます。
心の動きはとても早く、そして自動的に様々なことを行っているので、私たちが心の動きに気づくのはハエを箸で捕まえるよりもずっと難しいことです。
しかし、マインドフルネスを続けているとやがて心の動きにピッタリとついていく事ができるようになります。
それでは、手の動きを続けていきましょう。
(しばらく手動瞑想)
大切なことは心が勝手に妄想やブツブツを始めてから、再び「手がここにある感覚」に戻ることです。
そして戻ってくる瞬間こそが大切なのです。
戻ってくる瞬間に心が何をしていたか知ることができるからです。
普通に生活しているといつも心の勝手な動きに振り回れていて、それで当たり前なのです。
ですから、今は当たり前でないことをしています。
もしかしたら皆さんは初めて心と向き合っているかもしれません。
心にしばらく振り回されたとしても、やがて再び「手がここにある感覚」に戻ってきましょう。
例えば、「心」というまだ小さな子供を育てている母親が私だと考えてみてください。
小さな子どもはお母さんの近くで遊んだり遠く離れたりを繰り返しています。
子供が少しお母さんの視線から離れても、お母さんがいる所がわかれば必ず帰ってきます。
子供が帰ってきて手が泥で汚れていれば、お母さんは泥遊びをしたとわかってお手てを拭いてあげます。
でも、お母さん自身が子供を忘れてあれこれ走り回っていたり、子供のやることなすことに腹を立てたりして振り回されていたらどうでしょう。
子供は安心して帰る所がなくなって迷子になってしまいます。
大切なことはお母さん自身が安定していて、子供が安心して帰るところがある事です。
・歩く瞑想をやってみよう
先ほどの手動瞑想では「手がここにある」感覚に戻りました。
これから行う歩く瞑想は右足を前にだした時に「右足がここにある」、左足を前にだした時に「左足がここにある」と気づいていきます。目を開けて歩いていきます。
それでは二列になって、突き当たったらUターンして往復しましょう。前の人が止まっている時もその場で足踏みしましょう。
(歩く瞑想をみなさんで。)
途中で、視界に入ったものを目が追いかけていくことがあると思います。
その時はまた「足がここにある」感覚に戻ってきます。
何度でも戻ってきましょう。
(しばらく歩く瞑想。)
それでは席に戻ってください。
何度も何度も戻ってくるうちに、あなたの心にどんな癖や傾向があるかわかってくるでしょう。
例えば、昔の失敗をよく思い出す人もいれば、色々と考え事をする傾向のある人もいます。
また、映像が浮かんでくる人、言葉がでてくる人、体がすぐに緊張しやすい人。それぞれに心の個性があるのです。
自分の心の個性がわかってくると、現実的な対処ができるようになります。
例えば、誰かを思い出したときに体がぎゅっと緊張していることに気づいたとします。
そうしたら無理に苦手な人と付き合いすぎて疲れていた生活から、少し距離を置くように人生を選択することもできます。
マインドフルネスを続けていると、やがては言葉やイメージになる前の、ありのままの現象に触れることができます。
そこから先は専門的な話になるので、ここでは控えさせてもらいます。